略歴

院長
松村喜志雄(1953年5月7日生まれ)
 
略歴
大阪大学医学部卒業後同大学神経科精神科で1年間研修 
星ヶ丘厚生年金病院(現星ヶ丘医療センター)神経科医長
松村クリニック院長
 
資格
精神保健指定医
日本精神神経学会専門医
日本神経学会専門医 


薬について

 医師は薬を処方するにあたってはまず患者さんがどのような問題・症状を抱え、それに対してどのように感じ、困っておられるのかを理解しようとします。そして問題・症状の解決軽減のために薬を使って頂いた方がいいと判断するとどのような効果のある薬をどの程度の量どのタイミングで服用して頂けば患者さんの症状を軽減させられるかを考えます。使うべき薬とその処方が決まると患者さんに内服の必要性を説明し使用の同意を得るようにします。
同意され内服するに際して留意して頂きたいことがあります。他の科では薬はそれを服用すれば症状が必ず改善するのできちんと服用するものというイメージが強いのかもしれませんが精神科とか心療内科の場合はそうとはいかない場合が多いのです。
医師は十分熟考の上薬を提案するのですが、実際に服用すると効果があまり感じられなかったりとか眠気が強すぎたり等、自分には合っていないと感じる場合が起こり得ます。薬が合っているか合っていないかを決定するのはあくまでも患者さんなのです。その場合は2度目の受診の時に服用した印象をそのまま医師にお伝えください。
私は1回目の処方で効果を十分実感して頂けなかった場合、患者さんの話をよく聞き内容を分析理解したうえで処方のし直しをし、何とか2回目か3回目くらいに患者さんに効果を実感して頂ける処方を見出そうと努力しています。良い医療をするためには医師と患者さんの信頼関係が大切です。

薬を使うにあたって是非知って頂きたいことを以下に書きます。これらは単なる知識ではなく治療効果を上げるために大切な事柄になります。
1)薬の名前 2)薬の効能・効き方・一日最大使用可能量 3)副作用
1)薬の名前
自分服薬している薬の名前は是非知っていてほしいものです。以下に述べる2)、3)の知識と一緒に。
2)薬の効能・利き方・最大使用量
薬の効能
今自分が服用している薬が自分の感じているどの症状を軽減するために出されているかを知っているかが大切です。不安に対するものか、意欲を出すためのものか、睡眠のためか、人には聞こえず自分にだけ聞こえる声(幻聴)を聞こえにくくするためか等です。これにより今後薬をもっと多く増やすべきかもう減らせるかの判断もできます。
薬の効き方
薬の効き方は大きく分けて服用後20~30分くらいで効果の出るものと長期に1週間~1か月服用を続けて徐々に効果のでてくるものがあります。
前者は医師の指示に従って定期的に服用することもありますが、患者さんが症状の強い時に屯服として服用することも可能です。後者は決められた処方通り服用することが原則となります。
薬の1日最大使用量
当院では薬の1日薬の最大使用量もお伝えするようにしています。万が一話忘れていたら質問をお願いします。
これにより自分がたくさん薬を飲んでいるのか、まだ少量しか飲んでいないのかの目安が得られます。
3)副作用
副作用の知識は大切ですが、卵を食べる際に卵アレルギーで食べられない人が少数いる様に服用したごく一部の人に出現するものなので過剰に恐れることは避けたいものです。

時折、マスコミの報道のせいもあるのでしょうか、薬の効果よりも副作用を重大視して薬物療法を不必要にためらう人がいますが、副作用を気にする前にまず使用の目的・薬の期待される効果を理解したうえで処方された薬を試してみましょう。
薬物療法については批判的な意見も多く認められますが、今まで述べてきた通り処方する医師と十分な意思疎通を図りながら行えば弊害を避け有益なものとできます。 



統合失調症とてんかんの場合について 

 この二つの病気に対しては薬を内服するということが治療を成り立たせるうえで必要不可欠です。通常の医療と同じ様に処方に従って内服することが原則になります。
 患者さんは内服をした後の症状の変化を医師に適切に伝え、医師はその情報をもとにどんな薬を1日どれくらいの量をいつの時間帯に服用して頂くかをお伝えします。ここでも患者さんと医師のコミュニケーションが如何にうまく取れているかどうかが大切になります。 


内服しても症状が改善しない場合

内服しても症状の改善が無い場合処方された薬があっていないことがまず考えられます。
ただ、もう一つ考えておかないといけない可能性があります。薬はあっているのだが、
内服する量が少なすぎたり、服薬時間が適当でなかったりして効果がまだ充分発揮されていない場合です。
どの程度の量を服用すれば効果が出るかは個人差があります。例えが良くないかもしれませんが、お酒の場合を考えるとお猪口一杯飲んでもすぐ顔が真っ赤になる人もいれば、
1~2合飲んでも顔色一つ変わらない人もいます。薬の適量も個人差が大きいのです。
服用している薬が徐々に効果を出してくるタイプのものである場合も注意が必要です。
例えば多くの抗うつ剤では効果発現までに2週間~1カ月かかります。
薬が合っていないと感じたら内服を中断しても、そのことを担当医に報告すること、
もし状況が許すなら、担当医と内服を中断する前に今後どうするか、相談することを
お勧めします。

どのような場合に内服を勧めるのか

患者さんの話を聞きどのような場合に薬の内服を勧めるかについて説明します。
まず、先ほど説明した幻覚や妄想と思われる症状があり統合失調症が疑われた場合、または脳波検査、症状発現の仕方でてんかんと考えられた場合は迷わず内服をお勧めします。
これら以外の場合で内服をお勧めするのは問題が深刻でそのままにしておけばその人の人生に大きな支障がでる恐れのある場合です。たとえば会社へ行けなくなる、学校へ通えなくなる、家事がこなせず生活や子育てに支障がでる場合です。時間のゆとりのある場合には休職して安静に過ごす、入院をして休憩するなどの方法がとれる場合もありますが、時間にゆとりがなく早急になるべく回復の兆候を得たいときには自宅での薬物療法の開始、場合によっては入院しての薬物療法の開始を考えます。
次にいったんは内服なしでの治療を開始してみたが、思いのほか治療効果が上がらない場合です。この様な場合には内服加療をお勧めすることがあります。
いずれの場合も患者さんの内服への同意があることが大切です。同意なしでは治療はうまく進まないことがほとんどです。まれに同意なしでも薬物療法を開始せざるを得ない場合もありますが、あくまでも特殊な場合に限られます。

身体症状について

私たちは生きていく上で様々な身体症状を経験します。たいていの場合は頭痛であったり、微熱であったり、だるさであったり余り快くないものです。
それらの症状は重大な病気の前触れである場合もありますが、ストレスとか身体に無理がかかった時にそろそろ休みなさいと私たちに教えてくれる警告のサインである場合が多いものです。
頭痛にしろ疲労にしろ、あまりひどい時は鎮痛剤を服用したり滋養強壮剤を使ったりして治療するのは必要だと思います。
ただし治療の目標を対象とする症状を絶無にすることにすることにするのは止めるべきです。何故なら先に述べたようにこれらの症状は身体を壊さないようにする警告のサインの意味があるからです。治療の目標は症状を軽くすることや短時間の休息で症状が治まることにし、大抵の身体症状は自分の身を守るための大切なものなのだと考える様にしましょう。
いくら休息しても、対症療法をしても症状が治まらないときは病気の可能性が高まるため専門医を受診するようにするのが良いと考えます。

物事のとらえ方について

 ごく普通に考えると「Aである」ということと[Aでない」ということは両立しません。
 ところが私たちは物事を考えたり感じたりするときに、「Aである」ということと[Aでない」ということを同時に行うものです。それもしばしば。
 例えば目の前にしなければならないことを抱えた場合はどうでしょう。私たちは多くの場合「やりとげたい。やりとげなければ」と考える一方で、「面倒だな、つらいな、やらずに済ませられないかな。」と思うのではないでしょうか。
 もう一つ面白い例をあげます。私たちは親しい人、例えば親とか子供とか、兄弟とか夫とか妻とか恋人とかに対してどうでしょう。もちろのこの世の中で一番大切な人、一番愛情を感じる人でしょう。しかし、「何故こんなことも理解してくれない。」「何故、反対ばかりして理解してくれない。」と最も強く感じるのは親しい人に対してではないでしょうか。浅い人間関係の相手なら自分と合わないと感じたら、接触を避けようとするでしょうから反感はそれ程強くならずに済むことが多いものです。しかし親しい間柄では合わないと思いつつ関係を続けるので怒りもだんだん強くなりがちです。
 親しい人、大切な人には「一番好きだが、一番い嫌い。」と感じてしまうのです。

困難に出会った時に

 上の「物事のとらえ方について」の欄でのべた私たちはしばしば正反対のことを同時に考え、感じるということは困難に出会った時に応用できます。
 冷静さを保てず心に余裕の無い時、私たちは自分を苦しめ責める考え方、感じ方ばかりをしがちです。失敗を例にしてみます。失敗はしたくないもの、してはならないものです。しかし冷静に考えれば失敗にはマイナスの面ばかりでなくプラスの面もあります。失敗することにより私たちは多くを学び、よりよいものを得るのです。もっと強く言うと失敗無しには本当に良いこと、大切なことを学ぶことはできないのかもしれないのです。
 4回転半ジャンプを華麗にこなすスケート選手は練習の時に何度ころんでいるか分かりません。
 失敗をした直後はしてはいけないことをしたと思い後悔ばかりしがちです。しばらくして落ち着いてくると後悔すると同時に次からはこういう工夫をしてみよう、転んでもただでは起きないぞと反対のことも考えるようになります。困難に出会った直後や、ゆとりを失い感情的となっている時はマイナスなことばかり考えがちですが、落ち着いて冷静になれば必ず別のそれをプラスに考える理屈が作れるはずです。
 私たちは正反対のことを同時に考えることがよくあるのだとすれば、困難に出会い、マイナスのことばかり考えてしまうときにはプラスの考え方を探し、マイナス・プラスの考え方を同時並行でしてみようとすることはおかしなことでは無くむしろそうすることでその苦しみを半減させることができるかもしれません。

困難があればこそ

 困難についてはもっと、積極的な考え方もできます。生きる上で最も、良かったと感じられることにはいろいろのことがありますが、その中の一つに今までできなかったことができるようになる、問題が解決できる様になるということがあるのではないでしょうか。つまり私たちが幸福を感じるためには問題、困難の存在が前提に在ってそれ故に人は不幸になるけれども、それ故にそれを解決した時に喜びも感じられるのです。困難があればこそ幸福になりえるのだ、そのように考えたいものです。とてもそのようには考えられないことの方が多いかもしれませんが。

仕事をするときに考えなければならないこと

仕事を進める上で考えておかなければならないことが2つあります。
一つ目は当然のことながら自分に与えられた業務を誠実にこなすことでしょう。しかしもう一つ大切なのはその仕事・業務を継続しなければならないということです。業務を誠実にこなすということだけに目を奪われると一生懸命1000メートル走のような走り方をしてしまい途中で息切れして走れなくなってしまう恐れがあります。仕事は続けなければならないのだとするならば1000メートル走ではなくマラソンを走るようなイメージで仕事はしたいものです。スピードを上げて走るところと力を抜いてゆっくり目に走るところの切り替えを工夫しながら走った方が良いでしょう。理想を言えば仕事をした疲れは次の日の仕事をするまでに回復できていること、疲労と回復のリズムができていることが大切です。前の日の疲れがとり切れないまま次の日も頑張るということを何日も続ければやはり継続は難しくなるでしょう。
安全な運転をするためにはアクセル、ブレーキの踏みかえ方を練習しなければなりません。アクセルばかりを踏んでは危険な運転になりますし、ブレーキばかり踏んではそれはもはや運転とは言えないでしょう。それと同じく良い仕事をするためには一生懸命働く部分とすこし調節をしたゆっくりした働き方の切り替えを工夫することが大切と思います。
働かない自分は怠けていると否定的に考えないこと、休むことも働くのと同じくらい継続のためには大切です。
働くことと休むこと、その切り替え方を工夫することが重要でかつ難しいのだと考えます。

人の目について

私たちは人目を気にします。
全く人目を気にしないという人もいるかもしれませんが、それは一人よがりになりやすく時と場合によっては人生をつまらないものにしてしまうおそれがあります。
逆に人目を気にし過ぎるのも心が落ち着かず自分を苦しめることに成るでしょう。
それはたいていの場合どんな事柄にもプラスの評価もマイナスの評価も与えることができるからです。
例えばここに二人の人AとBがいるとします。Aは物事を比較的速くこなし、Bは比較的ゆっくり進めるとしましょう。Aに対して褒めるとすればてきぱきしている、能率的だなどの言葉が浮かぶでしょう。他方けなすとすれば雑だ、いい加減にしている、適当だ、などが考えられます。Bに対しても褒めるとすれば丁寧だ、慎重だなどと言えますし、けなすとすれば愚図だのろまだとなるでしょう。
ここからいえることはBのタイプの人が他人から愚図だ、のろまだと言われるのを恐れて無理にスピードを速めようとするのはあまり得策でないかもしれません。速めたところで荒い、雑だと批判されるかもしれないからです。それなら自分の性格を大事にし自分のスピードで物事を行いものごとを速く進める人は自分はてきぱきしていると褒められるかもしれないが荒い、雑だとけなされるかもしれないと覚悟をする、遅い人は丁寧だ、慎重だと褒められるかもしれないが、愚図だとけなされるかもしれないと覚悟した方が生きていくのに都合が良いと言えます。
人のどの言葉を真剣にとらえ、どの言葉を無視するかは結局、自分で主体的に決めていかなければならないのでしょう。